宇都宮市・鹿沼市近辺での
『 カウンセリング & 伴走型ソーシャルサポート 』は
一般社団法人 福祉コラボちむぐくる
とちぎステップ家族相談室
〒322-0021 栃木県鹿沼市上野町137-3
JR日光線・鹿沼駅から徒歩3分(JR宇都宮駅から2駅目です)
わたしたちは
ひとりぼっちじゃない。
アディクションからの回復の流れについて考えてみましょう。
まず、問題が最も激しく表出している二次嗜癖の問題に取り組みます。取り組みとは、アディクション対象(アルコールや薬物、ギャンブルや買い物、万引き、自傷行為など)に頼らない生き方(生活・暮らし)の達成です。そのために、アディクションに対する知識を学び(当相談室では、カウンセリングやグループ・カウンセリングがここに該当します。本人は、アディクションに関する知識を育み、ご家族は、「動機づけ面接法」や「CRAFT」などを学びます)、学んだ知識を実際の生活場面で実践します(セルフヘルプグループなどへの継続参加)。この実践の定期的な点検を行いつつ(当相談室では、カウンセリングやグループ・カウンセリングがここに該当します)、次の実践ステップに移行していきます。が、この実践や実践ステップの移行も簡単ではありません。多くがスリップ(再使用・再行動)を経験します。ここでは、「七転び八起き」との眼差しと理解が大切になります。
この段階で、例えば本人のギャンブルの問題に巻き込まれているご家族は「①借金の尻ぬぐいをしない②金銭管理をしない③干渉しない・監視しない④察しようとしない」など、学んだ回復のための関わりを実践します。
そして、二次嗜癖の問題、すなわち、アディクション対象に頼らない生き方が継続したからこそ見え出した一次嗜癖の問題に取り組み始めます。自分自身が抱えていたトラウマの問題や、他者との関係の持ち方の問題、怒りの感情のキャッチと表出の問題などに徐々に関心をシフトさせていきます。さまざまな問題との折り合いでは同じ経験をわかちあえる仲間の力が、そして、トラウマや源家族との問題などとの折り合いでは専門家のサポートも必要になります(当相談室では、このサポートにも、カウンセリングやソーシャル・プログラムで対応しています)。同時に、家族関係の再構築や就労なども、この段階での課題となっていきます。
次のステップでは、新しい生き方をし続ける中で、自分自身の丁寧なケアを、仲間や時に専門家のサポートを仰ぎ行います。セルフヘルプ・グループへの継続参加も、必要になる方もいるでしょう。
以上、アディクションからの回復の概要です。
余計な手助けをする(尻拭い、イネイブリング)ことで、本人をますます追い詰めてしまいす(アディクションという病気の進行を手助けしてしまう)。つまり、助けることが問題なのではなく、助け方が問題になるところがポイントとなります。
具体的な「尻拭い、イネイブリング」の一例を、次の表に整理しました。
尻拭い(イネイブリング)の仕組み | |
一生懸命関われば関わるほど… | 本人は無責任になる |
朝起こしてあげる | → 自分で起きなくてもいい |
会社に遅刻や欠席の連絡を入れる | → 嫌な思いをせずに済む |
本人の代わりに不祥事の尻拭いをする | → 痛い場面を避けられる |
本人の代わりに借金を返す | → 自分で返す必要がない |
本人の代わりに仕事を探す | → 悩んで探さなくて済む |
経済的支援をする(生活費の免除・支援など) | → 自由に使えるお金が増える |
まずいことを見てみぬふりをする | → 問題意識を持てない |
顔色をうかがって対応する | → 相手を見下す、相手を尊重しない |
ものを与えるなど駆け引きをする | → さらに駆け引きをしかけてくる |
激しくしかったり延々と説教したりする | → 責められた記憶だけが残る |
怒ったりなだめたりを繰り返す | → 結局は大丈夫とタカをくくる |
ここに、「心理的境界線」「“わたし”メッセージ」「問題と課題を分ける」「引き算から足し算へ」「動機づけ面接法」「CRAFT」などの知識を加えながら、お一人おひとりのご家族なりの対応方法を実践していきます。
その実践の途上、繰り返しご確認いただきたい以下の提案を付記します。
(1)アディクション問題を抱える本人のみならず、家族である自分自身も非常に困難な状況にあることを認識すること。
(2)アディクション対象に頼らないことは、問題を抱える本人にしかできないという事実を受け入れること。
(3)大切な人を支え、励ますように、自分自身のことも大切にすること。
(4)本人に対しても自分に対しても、責任追及はやめること。
(5)セルフ・ヘルプ・グループやその他治療・援助があることを、本人に知らせても、コントロールしないこと。
(6)過保護にならないこと(尻拭いをしないこと)。
(7)本人のアディクションの使用や行動をコントロールしようとしないこと。
(8)アディクション問題以外の、普通の会話が生活・暮らしの中でできるようになること。
(9)前向きな形のコミュニケーションをこころ掛けること。
(10)孤立しないこと。
W.クリッツバーグが家族機能スケールとして提唱したものを、下表に整理し、紹介します。
問題を抱えた家族 | 健康な家族 |
強固なルールがある | 強固なルールがない |
強固な役割がある | 強固な役割がない |
家族に秘密がある | 家族に秘密がない |
家族に他人が入り込む抵抗 | 家族に他人が入ることを許容 |
きまじめ | ユーモアのセンス |
家族成員にプライバシーがない(個人間の境界が曖昧) | 家族成員はプライバシーを尊重され、自己の感覚を発達させている |
家族への偽りの忠誠(家族成員は自由に家を出ることができない) | 成員に家族意識はあるが、自由に家を出ることができる |
家族成員間の対立は否認され無視される | 家族成員間の対立は認められ、解決が試みられる |
変化に抵抗する | 常に変化する |
家族に一体感がなく、ばらばらである | 家族に一体感がある |
成瀬が整理したもの(依存症患者の背景にみられる具体的な特徴)を、紹介します。
(1)本当は、完璧主義できちんとしなければ気がすまない。
(2)本当は、柔軟性がなく不器用で自信がない。
(3)本当は、頑張り屋であり頑張らねばと思っている。
(4)本当は、根はきわめてまじめである。
(5)本当は、やさしく人がいい。
(6)本当は、気が小さい・臆病・人が怖い
(7)本当は、恥ずかしがりで寂しがりである。
(8)本当は、自分は人に受け入れられないと思い込んでいる。
(9)本当は、自分は人に受け入れられたいと思っている。
(10)本当は、生きていることがつらくて仕方がない。
セルフヘルプ・グループでは、同じ悩みや問題を抱えた人たちが集まり、互いに自分の話をすることで思いをわかちあいます。アディクション問題からの回復には、セルフヘルプ・グループは不可欠(I can't,WE CAN.との理念の実践)だと考えています。
アルコール依存症者の会・薬物依存症者の会・摂食障害者の会・ギャンブル依存症者の会・ギャンブル依存症者家族の会・アダルトチルドレンの会・吃音者の会・パニック障害者の会・脊椎損傷者連絡会・高次脳機能障害者の会・身体障害者親の会・ダウン症協会・自閉症児親の会・ADHD親の会・ひきこもりの会・自死遺族の会・近親者を亡くした人の会・うつ病の人の会・DV被害者の会・盗癖に苦しむ者の会・認知症を抱える家族の会・乳がん者の会・・・・・。
※ これらはほんの一部です。すべての問題にセルフヘルプ・グループがあると言っても過言ではありません。
「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害のケア」を考える②
引用・参考文献 : ① 山本由紀 編著・長坂和則 著(2015)対人援助職のためのアディクションアプローチ〜依存する心の理解と生きづらさの支援〜.中央法規. ②信田さよ子 編著(2019)実践 アディクションアプローチ.金剛出版. ③斎藤学 他 東京都精神医学総合研究所・編(1999)心のブラックホール〜うつとアディクションの病理〜. 講談社. ④松本俊彦 編(2020)アディクション・スタディーズ〜薬物依存症を捉えなおす13章〜.日本評論社.⑤認定NPO法人ワンデーポート 編(2012)本人・家族・支援者のためのギャンブル依存との向き合い方〜一人ひとりにあわせた支援で平穏な暮らしを取り戻す〜.明石書店.⑥吉岡隆 編(2000)共依存〜自己喪失の病〜.中央法規.⑦松本俊彦・古藤吾郎・上岡陽江 編著(2017)ハームリダクションとは何か〜薬物問題に対する、あるひとつの社会的選択〜.中外医学社.⑧成瀬暢也 著(2019)ハームリダクションアプローチ〜やめさせようとしない依存症治療の実践〜.中外医学社.⑨W.クリッツバーグ 著・斎藤学監訳(1998)アダルトチルドレン・シンドローム〜自己発見と回復のためのステップ〜.金剛出版.⑩田中紀子 著(2021)家族のためのギャンブル問題完全対応マニュアル.ASK.⑪全国薬物依存症者家族連合会 編(2010)大切な人の薬物問題に悩む家族による家族のためのワークブック.