宇都宮市・鹿沼市近辺での
『 カウンセリング & 伴走型ソーシャルサポート
一般社団法人 福祉コラボちむぐくる

とちぎ家族相談室

〒322-0021 栃木県鹿沼市上野町137-3

JR日光線・鹿沼駅から徒歩3分(JR宇都宮駅から2駅目です)

わたしたちは
ひとりぼっちじゃない。

電話受付は,休室日(月に1,2回程度)を除く
毎日(平日・土日祝)9:30-22:00です.

お問合せ・ご相談はこちらへ

090-7243-2484

「ひきこもりとそのケア」を考える①

D-1.「ひきこもりとそのケア」を考える①

ご質問&インデックス

  • Q1

    ひきこもっている息子の親です。関わりの際の留意点を聞かせてください。

  • Q2
    ひきこもり当事者が望んでいることや考えていることはどんなことなのでしょうか。
  • Q3
    とちぎステップ家族相談室では、ひきこもり当事者とその家族の支援に、「アディクションアプローチ」を活かしていると聞きました。「アディクションアプローチ」について教えてください。

応答(室長からのメッセージ)

Q1. ひきこもっている息子の親です。関わりの際の留意点を聞かせてください。

 ひきこもりは、その定義の中に「さまざまな要因」とあるように、個々の事例毎に丁寧に、そこに至った背景や経緯を理解することが大切です。そのことを踏まえながら、家族が「できる範囲でできること」を考えます。その際、家族臨床(療法)が幾多の事例から重ねてきた、家族をシステムとして理解する視点を土台にします。ここでのシステムとは、家族成員一人ひとりが、互いに影響を与え合いつつも、「あるまとまり(家族毎に、このまとまり方は異なりユニークな特徴を持っています)をもった全体(家族)として理解する」ということを意味します。

 その上で、家族としてのライフサイクル(生涯)とライフステージ(心理社会的な発達課題)、家族成員一人ひとりのライフサイクル(生涯)とライフステージ(心理社会的な発達課題)を絡めながら、「いま、ここ」での状況をまず整理することだと考えます。

 そして、ご家族自身が「いま、ここ」で「できる範囲でできること(変えられることと変えられないことの見極めなど)」を、孤立しないで点検しつつ実践する(健全なコミュニケーションを意識しつつ実践する)ことです。この実践の目標は、まず、「風通しのよい家族」に置き、ひきこもり当事者を追いつめないことが肝要です。

 この実践(関わり)の点検をする道具(心理的境界線や三角関係化など)は、当相談室が開催するダイアローグ・カフェ『親子関係を考える』の中で学ぶことができます。

Q2. ひきこもり当事者が望んでいることや考えていることはどんなことなのでしょうか。

 東京都江戸川区が2021年に行ったひきこもり実態調査から考えてみましょう。まず、当事者の声の中で、「日常生活の不安」の項目が目に留まります。ここでは、60%以上が「収入・生活資金」「自分の健康」に、47%が「家族の健康」に不安を抱えています。

 次に、「求めているもの」に目が行きます。その結果を以下に列挙します。

①    32%:「何も必要ない、今のままで良い」

②    21%:「就労に向けた準備、アルバイトや働き場所の紹介」 

③    18%:「短時間(15分から)でも働ける職場」 

④    16%:「身体・精神面について専門機関への相談」 

⑤    15%:「友だちや仲間づくり」 

⑥    15%:「趣味活動ができる場所」 

⑦    15%:「生活費についての相談」 

⑧    9%:「自立に向けたきっかけづくり」 

⑨    8%:「気軽に立ち寄れるサロンや居場所」 

⑩    3%:「定期的(不定期)な訪問相談の機会」

 そして、この結果が、ひきこもり期間に関係なく割合は変わらなかったことは特記すべきことだと考えます。

 最後に、この結果の分析には、とても慎重さが求められることを付記したいと思います。その理由は、「語られた言葉(例:「何も必要ない、今のままで良い」など)」を理解する際、「語ろうとしていたことは何なのか」との視点と同時に、「語られなかったことは何なのか」との読み取り(解釈)がとても大切になるからです。

Q3.とちぎステップ家族相談室では、ひきこもり当事者とその家族の支援に、「アディクションアプローチ」を活かしていると聞きました。「アディクションアプローチ」について教えてください。

 従来の専門支援は、先ずご相談者の「こころ」を問題にし、そこへのアプローチを重視しています。しかし、アディクション(依存症)アプローチでは、先ず「こころ」を問題にしないのです。なぜなら、例えばアルコール依存症は、「意志や性格の弱さ(つまりは“こころ”)」から、お酒(アルコール)を止められないのだとは考えません。つまり、「自分の意志(こころ)ではどうすることも出来ない状態にあること」をその理解の出発点にしているのです。換言しますと、意志や根性で、アルコールをコントロールすることは困難であるとの前提が出発点となるのです。

 また、依存症者の多くは、自ら治療を希望し、サポートを受けだすことは稀なのです。そのため、「否認の病」と呼ばれたりもします。この否認とは、例えば自身のお酒にまつわり起こる問題を「否定し、見てみぬふりをしたり、矮小化したり、感情を麻痺させてやり過ごす」などの心の使い方を指します。そのため、お酒にまつわり起こる問題に巻き込まれた家族が、忙しくなり疲弊していきます。そうしたことから、依存症は家族の病などとも呼ばれたりもします。

 そうした経緯から、疲労困憊し、専門のサポートを受けるために先ずご家族が相談機関などを訪れます。この気づいた人がまず動き、初期介入(危機介入)が始まるのが家族臨床・療法の特長で、そこに、「困っているのは誰か、何か」「何が問題か」の視点が加わったものがアディクションアプローチなのです。

 そして、次のステップでは、やはり「こころ(依存症者やご家族の)」ではなく、「依存症者とそのご家族の間で起こる具体的な出来事(怖いので依存症者本人が要求するお酒を買いに行ってしまったなど)」に焦点を当てカウンセリングなどを行います。

 そうしたカウンセリング(初期介入・危機介入)をとおし、ようやく、依存症者本人が専門のサポートを受けるために訪れるようになるのです。ここに至るまで、数年を要することも稀ではありません。本人が専門のサポートを受け始め、安定した時期から、初めて「こころ」を回復のテーマ(課題)とし始めるのです(ご家族も同様です)。

 このようなアディクションアプローチは、以下の点で、ひきこもり当事者とそのご家族の支援にも有用だと考えています。

(1)  ひきこり当事者の「こころ」を先ず問題にしないこと。

(2)  「意志や性格の弱さ(つまり“こころ”)」を、ひきこもり当事者の問題としないこと。換言しますと、意志や性格が弱いから、ひきこもり状態にあるのではないということ(意志や性格の問題ではないこと)。

(3)  「自分の意志(こころ)ではどうすることも出来ない状態にあること」がひきこもり状態であるのだと認識すること。このひきこもり状態こそ、「いま、ここ」で、ひきこもり当事者が自分自身を守る唯一の守り方なのだと理解すること。

(4)「具体的な出来事」に焦点を当てたカウンセリングを重視すること。

 アディクションにおける当事者支援は、「生き延びるための支援」とも呼ばれます。ひきこもり当事者への支援も、まさに「生き延びるための支援」と考えています。そして、双方の支援とも、その先の「“わたし”として生き抜く(成長する)ことへの支援」へとシフトしていきます。

 当相談室では、こうしたアディクションアプローチを、ひきこもり当事者とそのご家族の支援に活かし伴走・協働しています。

「ひきこもりとそのケア」を考える①

引用・参考文献 : ①江戸川区ひきこもり実態調査結果(2021年).②副田あけみ・遠藤優子 編著(1998)嗜癖問題と家族関係問題への専門的援助〜私的相談機関における取り組み〜.ミネルヴァ書房.

サイドメニュー