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「夫婦・カップル関係」を考える

A-1.「夫婦・カップル関係」を考える

ご質問&インデックス

  • Q1
    夫婦でも、子どもでも、恋人でも、「人(他者)を愛するということ」はどういうことなのでしょうか。
  • Q2
    夫との関係で悩んでいます。夫が機嫌を損ねそうな事柄を伝えるのは気が重く、言わずにすむ方法ばかり考えたり、夫の帰宅時間が近づくと緊張するのです。

応答(室長からのメッセージ)

Q1.夫婦でも、子どもでも、恋人でも、「人(他者)を愛するということ」はどういうことなのでしょうか。

 主に精神分析の視点から「人(他者)を愛するということ」を紹介します。

 精神分析家であり小児科医でもあったウィニコットは、愛することとは、「抱えること」、あるいは「抱える環境を整え、提供すること」と定義しました。この「抱えること」は、母親と赤ちゃんの関係で考えますと、母親による養育の一面であり、現実に刻々と移り変わる赤ちゃんに対処していく抱っこに起源を持つものです。すなわち、ここでは、赤ちゃんの欲求を直接満たす抱っこではなく、その喩え(象徴)としての意味での抱っこなのです。このように、愛の基本とは、「他者が伸び伸びと自分らしさを発揮することができるような“心的な安全な空間(環境)”としての“わたし”になること」なのです。また、ここで大事なことは、この“わたし”が、他者に侵入せず支配しないことなのです。すなわち、愛することとは、そもそも無条件なことなのです(「○○が出来たら、愛してあげる」などの条件付きの愛は、偽りの愛と考えます)。

 こうした愛は、「環境(心的な安全な空間)」故に、愛される側(他者)には、相手に愛されているかどうかわからないこともあり得るわけです。しかし、実際には、こうした愛に包まれているからこそ、そこで安心して、自分らしさを発揮することができるのです。

 そうした関係(環境としての愛、背景としての愛)の延長線上に、相手がいま、どんな気持ちでいるかを察したり、くみ取ったりする心の働きがあります。この働きによって、相手についての気持ちをくみ取り、その相手が望み願っていることを、かなえてあげたい、その願望を満たしてあげたいという思いが起こるのです。

 しかしながら、相手を愛しているといいながら、実際には、自分の欲望や願望を他者(相手)に投影することが起こりがちです。投影とは、愛する相手(他者)が本当に望んでいるものではなく、自分が望むものをあたかも相手が望んでいるかのように錯覚して、それを満たそうとする心の働きです(この心の働きで、自分のこころに置いておけない不快な欲望や願望、感情を持っていることを自覚せず、かつ、自らに罪悪感を抱かずにすんでしまうのです)。

 つまり、自分が望んでいるものを相手に投影して、相手がそれを満たすと自分も満足するのです。例えば、子どもを著名な大学に入れて、著名な企業に就職させたいという母親には、子どものためといいながら、そこには、自分が、あるいは自分の夫がそうであればいいという自らの願望を、子どもに投影し、子どもを通して満たそうとする心理があります。

 このような愛のあり方は、自己愛の延長の愛ともいうべきものです。言い換えますと、自己満足の延長の愛ともいえましょう。

 こうした自己満足の延長の愛ではなく、本当に相手が何を感じ、何を願い、何を望んでいるかを、自分を離れてくみ取ることができて、それに応えていくような愛のあり方があります。

 それは、相手が辛いときには、「辛いのね」と共感し、相手が苛立っていれば、「苛立っているのね」と共感するような気持ちの共鳴のあり方です。つまり、相手のそのときどきの気持ちや感情・感覚の状態に共感し、その感情・感覚を察して、それを言葉にして応答する心の働きです。

 このような愛のあり方を、乳幼児精神医学を専門としていたエムディは「情緒応答性」と呼び、同じく乳幼児精神医学と精神分析(間主観性論学派)を専門としたスターンは「情動調律」と名づけました。

 「情緒的応答性」とは、相手の喜怒哀楽の気持ちに対して、共感することです。「情動調律」とは相手の気持ちの元気のよさとか、明るさなど抑揚に同調し、その気持ちに応答する心の働きです。

 つまり、人は、自分の気持ちや感情を、相手から理解され、共感され、さらには、その気持ちを伝えられることによって、自分らしい感情・感覚を肯定することができるのです。

 実際、相手の気持ちを察し、応答するうちに、相手もまた、自分の気持ちを察して応答するといったような、二人の間に微妙な相互作用が起こるのが対人関係です。このように相手と自分との二人の間の情緒的交流の中で、愛のリアリティ(実感)とアクチュアリティ(体感)を持つものなのです。また、このリアリティ(実感)とアクチュアリティ(体感)たる愛は、二人だけにしか通用しないだけに、大きな価値を持ってもいるのです。

 このように、愛は、「①環境・背景としての愛②共鳴し共感する愛③二人の間の情緒的交流の中で、互いのリアリティ(実感)とアクチュアリティ(体感)を支え合う愛」に整理できます。

Q2.夫との関係で悩んでいます。夫が機嫌を損ねそうな事柄を伝えるのは気が重く、言わずにすむ方法ばかり考えたり、夫の帰宅時間が近づくと緊張するのです。

 モラハラという言葉(概念)があります。モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略で、精神的暴力、精神的虐待のことです。加害者(例えば、夫)は態度や言葉によるいやがらせを繰り返し、被害者に大きな不安や苦痛、恐怖を与えます。換言しますと、「言葉や態度によって、巧妙に人の心を傷つける精神的な暴力」を指します。このモラハラは、職場や学校、友人間、地域の集まりなど、人が集まるところではどこでも発生します。

 次のような例も、典型的な家庭モラハラとなるものです。

 「夫が帰宅する時間が近づくと、緊張感を感じ覚えるようになる。・・・夫が帰宅。そして、閉め忘れたカーテンを見つけるやいなや、『なんでカーテンを閉めないんだ!!!』と荒い口調で言い、足音高く自室に向かうと、激しい勢いでドアを閉めてしまった・・・」 

 また、DV(ドメスティック・バイオレンス)は、一般的には「配偶者や恋人など、親密な関係にある(またはあった)人から振るわれる暴力」という意味で使用されています。その中身を大別すると、「身体的暴力(殴る、蹴るなど)」「精神的・心理的暴力(嫌がらせ、暴言、中傷、無視、脅迫など、主に言葉によって精神的苦痛を負わせるなど)」「性的暴力(望まない性行為などを強要するなど)」「経済的暴力(生活費を渡さないなど)」「社会的隔離(親族や友人と会わせない、外出を禁止する、スマホのメールや着信履歴をチェックするなど)」「子どもを使った暴力(子どもを使って相手を攻撃したり、子どもの前で相手を非難、中傷したりなど)」などがあります。実際には、これらのうち何種類かの暴力が同時に振るわれることが多いのです。

 そうしたモラハラは、世間一般で言う夫婦喧嘩とは違う特徴を持っています。妻が反論しようものなら、威圧したり脅かしたり、相手が屈服するまで攻め続けます。また、立場が悪くなると、巧妙に論点をずらしながら持論を展開してたたみかけます。支配的で、一方的で、徹底的に攻撃して屈服を迫ります。まさに、「加害者―被害者」との関係が成立しているのです。

 ご質問者の夫婦関係にも、何れかの心当たりがあるのではないでしょうか。

 以下に、モラハラ被害者のチェックリストを綴ります。チェックリストにあてはまることが多いのであれば、あなたはモラハラ被害者である可能性が高くなります。

    夫が何を考えているかを読み取ろうとすることにつねにエネルギーを使う。

    自分の言動に対する夫の反応を先読みし、不測の事態に備えようとする。そのために結局、何もできなかったりする。

    夫が機嫌を損ねそうな事柄を伝えるのは気が重いので、言わずにすむ方法を考える。

    ちょっとした失敗(皿を割ったなど)をしたとき、夫がいなくても叱責する声が聞こえる気がする。

    夫の帰宅時間が近づくと緊張し、友人との電話をあわてて切り上げたり、子どもがさっさと片づけをしないと厳しく叱ってしまう。

    好きなTV番組は、録画して夫がいないときに一人で見たい。

    夫が楽しみにしている旅行やイベントには気が乗らなくてもつきあい、一応楽しそうに振る舞う。

    夫に頼まれたことは完璧にやらなくてはと思う。

    夫がセックスを要求してきたときは断れないと思い、嫌な行為も我慢して応じる。

    夫が怒り出すと、早くその場を収めることだけ考える。

    夫の言うことが間違っていると思ったときでも正さずに流す。

    家具や家電などを購入するとき、自分の意見や好みは聞いてもらえないとあきらめている。

    友達から誘われたとき、夫がその日留守かどうかで参加できるかどうかが決まる。

    結婚前に楽しんでいた趣味はほとんどやめたか、やっても今は楽しめない。

    夫が機嫌を損ねないようにと、隠していることや小さなうそがたくさんある。

    夫が予定を変更して外出しなかったり、早く帰宅したとき、ひどくがっかりする。

    外出すると、早く帰らなければとソワソワする。帰りが遅くなったとき、無意識に言い訳をたくさん考えている。

  当相談室では、夫婦・カップル関係にまつわる悩みごとに関しては、力の勾配や家族個々の関係・関係性なども踏まえながら、「ご相談者のニーズ(いま、必要なこと)」を支えつつ、“カウンセリングとソーシャルサポート”の目標へ向け協働し丁寧に伴走いたします。

夫婦関係を考える

引用・参考文献 : ① 小此木啓吾 著 (2001)ドゥーイング・ファミリー〜家族愛をどう取り戻すか〜.PHP. ②A・J・ザメロフ、R・N・エムディ 編(2003)早期関係性障害〜乳幼児期の成り立ちとその変遷を探る〜. 岩崎学術出版社. ③D.N.スターン 著(1989)乳児の対人世界〜理論編〜.岩崎学術出版社.④D.N.スターン 著(1991)乳児の対人世界〜臨床編〜.岩崎学術出版社.⑤D.N.スターン 著(2000)親ー乳幼児心理療法〜母性のコンステレーション〜.岩崎学術出版社.⑥本田りえ 他著(2013)「モラル・ハラスメント」のすべてー夫の支配から逃れるための実践ガイドー.講談社.⑦ランディ・バンクロフト 他著(2016)別れる?それともやり直す?カップル関係に悩む女性のためのガイドーうまくいかない関係に潜む“支配の罠”を見抜くー.明石書店.⑧ドナルド・G・ダットン 他著(2001)なぜ夫は、愛する妻を殴るのか?ーバタラーの心理学ー.作品社.

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