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「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」を考える

F.「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」を考える

ご質問&インデックス

  • Q1
    「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」って何なのですか。
  • Q2
    「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」の対象って何のですか。
  • Q3
    「アディクションアプローチ」の特長について聞かせてください。

応答(室長からのメッセージ)

Q1.「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」って何なのですか。

 まず、記号を用いて各用語の関係を考えます。「依存症=使用障害≦アディクション(嗜癖)」という図式に置き換えることができましょう。2013年(日本語版は2014年)の「アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」から、それまでの依存症(アルコール依存症など)という用語から、使用障害(アルコール使用障害など)という用語を使うようになりました。そして、現在、症状の軽い人から重い人まで、治療対象とするようになっています。

 そして、アディクション(嗜癖)という用語は、「耽溺(一つのことに夢中になって、他を顧みないこと。多く不健全な遊びにおぼれること)」や「(ローマ慣習法の)借金奴隷」にその語源を見ることができます。つまり、その対象をより広くひとの生活・暮らしのさまざまな「もの」や「こと」(カフェイン、世話やき、強迫的な掃除、恋愛、お金、万引、買物、メロドラマ、ゲーム、インターネット、テレビ、仕事など)をも対象とした用語なのです。

 では、そもそも「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」って何なのでしょう。

 ひとの日常生活は「学習」と「習慣化」で構成されています。例えば、ご飯を食べる時には箸を使う、生理現象が生じた際はトイレを使う、二足歩行で移動するなどは、まさに学習(躾をとおしての行動の変容)と習慣(当たり前の振る舞いとなっていく)の賜物なわけです。この学習と習慣化の目的は、生命の維持にあります。ところが、その「習慣」がコントロールを失い生活そのものの維持を危険にさらす(健康的な生活の破綻)状態に陥ってしまうことが起こるのです。例えば、「お小遣いの範囲を超えてギャンブルにお金をつぎ込み続ける」「明日仕事があるのに明け方まで酒を飲み続ける」「月に使って良い範囲のお金を超え買物をし続けてしまう」「明日大切な予定があるのに徹夜でネット・ゲームをし続けてしまう」などの状態です。こうした逸脱した習慣への執着のことを、「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」と呼ぶのです。言い換えますと、「個体(ひと)の利益(生命の維持)にそぐわなくなってしまう一種の習慣障害(まさに生命の危機となる習慣障害です)」を「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」と言います。

Q2.「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」の対象って何なのですか。

 次の表のように整理することができます。

二次嗜癖

物質嗜癖

(摂取型嗜癖)

アルコール、違法ドラッグ(覚醒剤・大麻など)、処方薬・市販薬、生活用品のなかにある薬物

行為過程嗜癖

(プロセス嗜癖)

ギャンブル依存症(病的賭博)、買い物嗜癖、浪費癖、借金癖、ネット・ゲーム嗜癖、抜毛癖・嗜癖的掻破など、仕事依存、遁走癖(失踪壁)、収集癖、窃盗癖(クレプトマニア)、自傷癖、セックス依存、性嗜癖など

 

*一部の摂食障害は、物質嗜癖と行為過程嗜癖の双方含まれます。過食嘔吐、拒食、過食

一次嗜癖
人間関係嗜癖 関係嗜癖(共依存)、世話焼き嗜癖、役割嗜癖、愛情嗜癖、異性嗜癖

 「一次嗜癖」は、アディクション(嗜癖)病理の本質を意味します。まさに、人間関係嗜癖(共依存)こそ、病理の本質です。そして、この人間関係嗜癖(共依存)を土台(一次嗜癖)として、「二次嗜癖」としての物質嗜癖(摂取型嗜癖)、行為過程嗜癖(プロセス嗜癖)が表れるとの病理の理解をします。

Q3.「アディクションアプローチ」の特長について聞かせてください。

(1)医療などのアプローチは、まず、「何に罹患しているか」との診断の視点が不可欠です。しかし、アディクションアプローチは、「何が問題か」「困っているのは誰か、何か」の視点を、アプローチで最重視します。そのため、「気づいたひとがまず動く」との初期介入(危機介入)からアプローチが始まります。そして、家族介入(ファミリーインターベンション)と必要な援助職の直接介入を結びつけつつのサポートを行うところが第一の特長と言えましょう。

(2)従来の医療や専門支援は、「」を問題にし、そこへのアプローチを重視しています。しかし、「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」は、そもそも「意志や性格の弱さ(つまりは心)などに起因して起こっているのではない」との理解を出発点とします。つまり、意志や根性で逸脱した習慣をコントロールすることは困難であるとの前提に立っています。換言しますと、「意志(心)」を強くしてもコントロールは困難であるとの前提に立っているのです(意志を強くしようとすればする程、アディクション対象にハマっていってしまいます)。そしてそのことが、この病気[アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害)]の本質を成しているとの逆説的な理解です。

 そこで、アディクションアプローチでは、「心」ではなく「具体的な出来事」を問題にするのです。「ギャンブルが止まらない」「買い物が止まらない」「ネット・ゲームを止められない」「(親が)尻拭いをしてしまった」「(親が)ATMになってしまった」など、「何が起こったのか、何が起きているのか」との具体的な出来事にです。すると、問題を解決するとの視点ではなく、課題に取り組む(自分なりにできる範囲でできることをする中で、ものごとの見方、とらえ方、受け取り方が変化していきます)との視点が重視されるようになっていきます。

 当相談室の室長は、このアディクションアプローチの実践を長く重ね続けています。そのため、「こころ」「対人関係・人間関係」「家族のこと」などで悩み立ちすくむ方々の抱える問題を、より多角的な視点から理解(アセスメント)し、目標に向け、ご相談者と伴走・協働しています。

 同時に、室長(カウンセラー&ソーシャルワーカー)は、日本嗜癖行動学会・関東甲信越アルコール関連問題学会・日本アルコール関連問題ソーシャルワーカー協会(ASW協会)などに所属し、臨床力の向上を図り続けています。

「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」を考える

引用・参考文献 : ① 山本由紀 編著・長坂和則 著(2015)対人援助職のためのアディクションアプローチ〜依存する心の理解と生きづらさの支援〜.中央法規. ②信田さよ子 編著(2019)実践 アディクションアプローチ.金剛出版. ③斎藤学 他 東京都精神医学総合研究所・編(1999)心のブラックホール〜うつとアディクションの病理〜. 講談社. ④松本俊彦 編(2020)アディクション・スタディーズ〜薬物依存症を捉えなおす13章〜.日本評論社.

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