宇都宮市・鹿沼市近辺での
『 カウンセリング & 伴走型ソーシャルサポート
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「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害のケア」を考える①

F-1.「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害のケア」を考える①

ご質問&インデックス

  • Q1
    「意志や性格の弱さ」が原因ですか。
  • Q2
    「気持ちよくなりたいから」アルコールやドラッグを飲んだり使ったりするのですか。
  • Q3
    「ハームリダクション」という言葉を聞きました。何を指すのですか。
  • Q4
    とちぎステップ家族相談室では、「ハームリダクション」の対応をしてくれるのでしょうか。
  • Q5
    とちぎステップ家族相談室では、どのようなアディクション(嗜癖)・依存症・使用障害に対応してくれるのでしょうか。
  • Q6
    依存症者の対応に困っている家族です。本人が治療を受けようとしないからです。依存症者を治療につなげるにはどうしたらいいのでしょうか。
  • Q7
    「共依存」って何ですか。

応答(室長からのメッセージ)

Q1.「意志や性格の弱さ」が原因ですか。

 「意志や性格の弱さ」が原因ではありません。「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」は、「自分の意志ではどうすることもできない状態にある」進行性の病気です。

Q2.「気持ちよくなりたいから」アルコールやドラッグを飲んだり使ったりするのですか。

 違います。

 このことについては、1980年代半ばにカンツィアンらによって提唱された「自己治療仮説」という理論から学ぶことが大きいです。自己治療仮説とは、依存症の本質を「快楽の追求」ではなく「心理的苦痛の減少・緩和」にあるととらえるもので、現在、アディクション臨床の専門家から最も支持されている理論の一つです。ここで言う心理的苦痛とは、自尊心・自己評価の低さ、社交場面での緊張、将来の不安、人間関係のトラブルが引き起こす苦悩などを指します。

 「生き延びるために」アディクションを必要としてきた、アディクションがあったからこそ「生き延びることができた」などと言い換えることもできましょう。

Q3.「ハームリダクション」という言葉を聞きました。何を指すのですか。

 もともと、薬物依存症の臨床実践から生まれた言葉で、「違法であるかどうかに関わらず、精神作用性のあるドラッグについて、必ずしもその使用量は減ることがなくとも、その使用により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを主たる目的とする政策、プログラム、そして実践である」と定義されています。

 そこから、アディクション臨床では、「被害(ハーム、harm:健康・社会・経済上の悪影響)を減少させる(リダクション、reduction)」ことを一義としたアプローチ(やめるか・やめないかの二者択一でないアプローチ)として用いられるようになっています。

Q4.とちぎステップ家族相談室では、「ハームリダクション」の対応をしてくれるのでしょうか。

 応じています。ただし、十分な受理面接をした上で、当相談室から提示させていただく援助方針(カウンセリングとソーシャルサポートの目標を含め)にご同意をいただけた場合となります。

 ただし、窃盗癖(クレプトマニア)など一部のアディクション問題に関しましては、「クリーンであること」を第一の目標としてご同意いただきます。

Q5.とちぎステップ家族相談室では、どのようなアディクション(嗜癖)・依存症・使用障害に対応をしてくれるのでしょうか。

 実際には、クロス・アディクション(多重嗜癖:見かけ上は異なる依存症である2つ以上のアディクションを一緒に発症していること)の問題を抱えた方が多いのが実情です。

  アルコールや違法ドラッグ・市販薬などの物質嗜癖(摂取型嗜癖)ならびに物質嗜癖とプロセス嗜癖の双方にまたがる摂食障害については、医療機関やリハビリテーション施設との連携と協働が不可欠です。連携と協働の中で、役割分担をし、回復のサポートをしています。

 また、ギャンブル依存症(病的賭博)、ネット・ゲーム嗜癖、買い物嗜癖、窃盗癖(クレプトマニア)、自傷癖、セックス依存、関係嗜癖(共依存)、恋愛依存などにも対応し、他の機関などとの連携と協働の中で、回復のサポートをしています。

 その他の行為過程嗜癖(プロセス嗜癖)、人間関係嗜癖につきましてもご相談ください。

 

「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害」の問題については、栃木ダルクならびに仙台ダルク(関連するサポート機関・団体などを含めたネットワークを含め)と連携・協働を積極的に図りつつ、回復のサポートをしています。

Q6.依存症者の対応に困っている家族です。本人が治療を受けようとしないからです。依存症者を治療につなげるにはどうしたらいいのでしょうか。

 「困っているのは誰か、何か」から始まるのがアディクションアプローチの特長であることに触れてきました。その背景には、「本人が治療を受けようとしない」ことで巻き込まれたご家族の悲痛が見え隠れしています。まさに、依存症者の周囲に居る者が一番苦労することこそ、この本人が治療を受けようとしないことなのです。

 そうしたことを踏まえ、まず、ご家族がご相談ください。

 ご相談(カウンセリング)とグループ・カウンセリング(ソーシャル・サポート)の中で、「家族への影響と回復のプロセス」「家族をシステムとして理解すること」「暴力への対応」「心理的境界線」「動機づけ法」「CRAFT」などについて学びます(知識を得ることで、「いま、なにが起こっているのか」「いま、何をすべきか、何をすべきでないか」などについての理解を深めます)。

 その上で、本人の回復(まずは治療への動機づけ)を、相談室専門スタッフとともに伴走・協働しながら考え、側面から後押しします。

Q7. 「共依存」って何ですか。

 「共依存」は一つの定義に縛られる言葉(概念)というよりも、幅のある言葉(概念)だと認識した方が理解しやすく正確なのです。

 そうしたことを踏まえつつ、代表的な定義を、ここで紹介いたします。

 まず、イギリスの社会学者であるアンソニー・ギデンズは、共依存者を「自らの存在論的安心を維持するために、自己の欲求を定義してくれる人を、一人ないし複数必要としている人間」、共依存関係を「同じような類の衝動強迫性に活動が支配されている相手と、心理的に強く結びついている間柄」と定義しています。また、そのことに加え、「関係性そのものが嗜癖対象となっている間柄」を固着した関係性と称してもいます。

 次に、アメリカの共依存研究第一人者であるシャロン・ウェイグシュイダー=クラウスは、共依存症を「他者あるいは他者の抱える問題への嗜癖、あるいはその問題との関係性への嗜癖」と定義しています。

 そして、日本の共依存研究第一人者の斎藤学は、共依存関係を「人に自分を頼らせることで相手をコントロールしようとする人と、人に頼ることでその人をコントロールしようとする人との間に成立するような依存・被依存の嗜癖的二者関係」と定義しています。

 この「共依存」は、アディクション臨床では、一次嗜癖に含まれるまさにアディクション病理の本質とされています。「人間関係嗜癖=共依存」で、「問題を起こすことで相手を支配しようとする人と、その人の世話をすることで相手を支配しようとする人との硬直した二者関係のこと」を指すと簡潔に表現できましょう。また、「他者の問題(刺激)がないと生き延びることが困難な人」とも換言できましょう。

「アディクション(嗜癖)・依存症・使用障害のケア」を考える①

引用・参考文献 : ① 山本由紀 編著・長坂和則 著(2015)対人援助職のためのアディクションアプローチ〜依存する心の理解と生きづらさの支援〜.中央法規. ②信田さよ子 編著(2019)実践 アディクションアプローチ.金剛出版. ③斎藤学 他 東京都精神医学総合研究所・編(1999)心のブラックホール〜うつとアディクションの病理〜. 講談社. ④松本俊彦 編(2020)アディクション・スタディーズ〜薬物依存症を捉えなおす13章〜.日本評論社.⑤認定NPO法人ワンデーポート 編(2012)本人・家族・支援者のためのギャンブル依存との向き合い方〜一人ひとりにあわせた支援で平穏な暮らしを取り戻す〜.明石書店.⑥吉岡隆 編(2000)共依存〜自己喪失の病〜.中央法規.⑦松本俊彦・古藤吾郎・上岡陽江 編著(2017)ハームリダクションとは何か〜薬物問題に対する、あるひとつの社会的選択〜.中外医学社.⑧小西真理子(2017)共依存の倫理〜必要とされることを渇望する人々〜.晃洋書房.

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